実際に私が経験した不正事例です。
概要を説明しないと、その後のお話が不明瞭になるので、
簡単にお店の構造とオペレーションを記載しておきます。
※店舗は3フロア構成。
1F:エントランス及びレセプション、バー及びバーカウンターが設置されているフロア。
2F:メインダイニング
3F:ルーフトップ
お客様は、1F、2F、3Fとそれぞれの場所を移動しながら、
フロアごとに楽しんで頂くスタイルで人気を博していた。
※お客様がフロアを移動する際に、伝票のテーブル番号も移動していく。
例えば1Fは101~、2Fは201~、3Fは301~という風に、
一組のお客様が来店されたら、伝票はフロアごとに都度テーブル変更していく。
という特殊なオペレーション。
不正発覚——売上減少の違和感からの気づき
該当店舗へ店長として赴任して数週間後、営業中にレジでPOSの機能の、
簡易売上チェックをしている際に、ほんの15分前にチェックした際から、
売上金が1万円ほど減っている事に気付く。
売上が減る=【一度売り上げた商品の何かを取消】
したという事なので、何らかのお客様への不備があったと解釈。
そういった報告が店長である自分へ無かったので、
誰かがミスしたことを内密に処理しようとしたのかと推測、
取消した内容を調べるために、POSの動作ログを確認する。
結果、一度売り上げられていたワインが取消されていたことが発覚。
ログ上では取消した担当者はわかるが、
どのフロアにあるPOSかまでは、記載されていない。
不正の可能性に気付く
基本的にお客様のワインを売り上げることが多いのは、
1Fのテーブル、バー。もしくは2Fのメインダイニング。
3Fのルーフトップでワインを売ることはほとんどなかった。
該当ワインを売り上げたのは、テーブル番号を遡ればメインダイニングである場所。
取消されていたのは、すでにお食事を終えられ、屋上へ移動し、
残りのワインとデザートを楽しんでいたテーブル番号。
したがって、取消をしたのが3FでのPOSからの操作と思われたが、
前述した取消した担当者は、POS上のログではメインダイニング、
すなわち2Fのスタッフであった。
そのスタッフが2Fから移動して3Fへ行くことができない状況であった為、
軽く「あのワイン問題なかった?」と状況を確認すると、
「はい、お喜びいただけましたよ。」という答え。
その2Fスタッフの反応から何の違和感も感じられなかったため、
これはミスをしたことを内密に処理しようとしているのではなく、
とっさに不正の可能性があることを悟り、慎重に調べを進めることにする。
手口はこうだ
前述のように3フロアからなるお店だったが、
最終的にお客様が行くのは、ほぼ3Fの屋上のフロア。
なので3Fで会計をされることが多かったが、
会計ができるPOSを導入しているのはレセプションのある1Fのみ。
3Fフロア担当のスタッフは、逐次1Fまで降りて来て、
レセプションスタッフにお会計をお願いするという、
非効率なオペレーションだった。
そのため、いつも3Fに入る、とあるスタッフは、
自前でお釣銭を用意しており、現金会計で領収書を求められるお客様には、
POS上では終了していないが、
先に自分の釣銭金で会計を行い、領収書を発行し、会計を終了させていた。
本来アイテムが取消された場合、
その取消したことを知らせる伝票が、該当プリンターから印字されるはず。
キッチン、バー(カクテルやドリンク)はできていたが、
なぜかワインだけが確立されていなかった。
すなわち、3Fスタッフは、
自分で先に会計を行える、【現金で領収書発行】するものに、
めぼしいワインを見つけて、お客様との個人会計後に、
ワインを取消処理し、差引金額を着服後、
1Fでの会計処理をしていた。という図式です。
しかも、その3Fスタッフは、ワインの取り消しが自分だと気付かれないように、
ワインを取り消す際のPOSのログインを、違うスタッフの番号を使用していたという徹底ぶり。
その後の顛末
上司に不正の可能性を報告し、該当スタッフと三者で面談、詰問し、
証拠を突き付けて、とうとう自白。
その後、伝票を遡ること、数か月間。
その3Fスタッフが在籍(出勤)していた期間すべてのログを洗い出して、
どれほどの不正をしていたかを調査。
最終的に被害額〇十万円という高額な不正でありました。
不正には、いくつもの要因がある
~不正に至ったポイント~
全て、前任の店長が管理しきれていなかったことを発端に、
それで今まで運営してきたんだからと疑問に思わなかった後任店長の自分。
不正に至るプロセスをなくすこと、管理することこそが、
未然に不正を防ぐ大きなポイントであると痛感した事件でした。
実は、自分が後任店長として赴任してきた際に、
このスタッフは「核」となるスタッフに育てていかなければ。
と期待して、選んでいた一人でもありました。
なので、落胆もかなり大きかったことは間違いありません。
また、仕事のできる人は、不正の方法も気付いてしまうのだ。という事も学びました。
同僚のスタッフが、発覚後に漏らしていた言葉が、

よく、『〇〇行った。そこでこんな良いホテルに泊まった』なんて言ってて、
同じ時給で働いているのに、なんでそんないっぱい金持ってるんだろうなーと思ってました。
よく不正する者は金遣いが荒くなると言いますが、事実だと思います。
そういった普段のレジャーや趣味、お金遣いに関する言動にも、
責任者はアンテナを立てておかなければいけません。
発覚後は示談の形をとり、そのまま在籍、系列の他店舗へ異動。
働きながら返済していく形を取りました。
しかし後日、本人から退社希望をうけ、
念書を認め月々の返済を約束させて、自主退社という流れになりました。
誤解を恐れずに言えば・・・
大事なスタッフを不正に染めて、結果、退社してしまったという事実は、
不正を行ったものだけの責任ではないと思わされました。
管理者にとって、不正防止のオペレーション構築が如何に大事かという事例です。
自分にとって、不正にまつわる、一番の痛い思い出です。
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